プラットフォームの提供に関する欧州司法裁判所判決➁

公衆伝達の概念に関する欧州司法裁判所判決Ziggo BV事件の紹介の続きです。
事案の概要と先決問題の内容はこちら

【結論】

Ziggo BV事件の先決問題1について、欧州司法裁判所判決は、次のように判断し、オンライン・シェアリング・プラットフォームを提供および管理する行為を公衆伝達と認めました。

「情報社会指令3条1項の『公衆伝達』の概念は、本件のような状況における、保護された著作物に関するメタデータによるタグづけおよび検索エンジンの提供によって、peer-to-peerのネットワーク内において、プラットフォームのユーザに対し、これらの著作物をローカライズし、これらをシェアできる、オンライン・シェアリング・プラットフォーム提供および管理することを含むという意味に解釈されなければならない」。

【コメント】

公衆伝達に関して、欧州司法裁判所は、これまで、Svensson事件、BestWater International事件、GS Media事件、Filmspeler事件と、立て続けに判断しています。
これらを通してみると、欧州司法裁判所は、日本でいえば間接侵害に該当するような行為について、公衆伝達権侵害、つまり直接侵害行為と捉えるという判断を確立させたように捉えられます。欧州では、各国の法制度はともかく、直接侵害と間接侵害を区別していないようです。
両者を区別していないため、欧州司法裁判所の裁判例では、物権的権利の侵害について、行為者が事情を知っていたかどうかや、営利目的の有無などの主観的事情を判断するというように、侵害成立の要件を歪めてしまっているように思います。しかし、そうはいっても、分析がされていないだけで、主観的事情がなくても侵害を認める場合とそうでない場合とに区別できるようにも思え、その意味では、日本の間接侵害論と似たような結論になるのではないかと考えられます。

ところで、本判決は、オンライン・シェアリング・プラットフォームの提供および管理行為が、公衆伝達に該当するということを判断しているにすぎません。本件で、オランダにおいて、原告であるStichting Breinが求めた行為は、オンライン・シェアリング・プラットフォームのドメインネームとIPアドレスのブロックでした。具体的にどのような行為を差し止めるのかは、このあとオランダの裁判所で判断されるのではと思いますが、ドメインとIPアドレスのブロックを認めるのかどうか気になります。オランダの第一審は請求を認容しているので、このような行為が公衆伝達行為と判断された以上、認容されることになるのでしょうか。

プラットフォームの提供に関する欧州司法裁判所判決

プラットフォームの提供に関する欧州司法裁判所判決