スポーツイベントにおける便乗広告(アンブッシュ・マーケティング)とは?-その2-

オリンピックをはじめとするスポーツイベントにおける便乗広告-間接的なアンブッシュ・マーケティング

間接的なアンブッシュ・マーケティングは、商標等を使用することなく、何らかの方法によりイベントと関連しているかのように見せかける行為です。
間接的なアンブッシュ・マーケティングには様々な手法がありますが、いずれも法律による規制が困難な行為です。

間接的アンブッシュ・マーケティングの例

➀スポーツイベントの開催場所周辺において、当該スポーツに関する関連イベントを行う行為

➁スポーツイベントの開催場所周辺において、当該スポーツ関連グッズを無料配布したり、販売する行為

➂スポーツイベントの開催場所周辺の広告スペースにおいて、当該スポーツイベントと自社を関連づけるような宣伝広告を展開したり、メディアを利用して当該スポーツイベントと自社を関連づけるような宣伝広告を展開する行為

➃スポーツイベントを応援しているなどの文言を、自社の宣伝広告等に附加する行為

規制の困難さ

これらは、当該スポーツイベントの開催場所周辺というスポーツイベントに関連する場所を利用したり、当該スポーツイベントに関連するスポーツを利用するなどの行為によって、一般人の意識において、当該スポーツイベントと何ら関係のない企業であっても、当該スポーツイベントと何らかの関係を有するかのように関連づけられてしまうという、情報を受け取る側の意識を巧みに利用した行為といえ、その意味で、法律上の規制は困難と考えられます。

また、これらは、オリンピックなどのスポーツイベント開催期間中に、企業と市民が一緒にイベントを盛り上げようとする企画として、純粋な応援行為といえなくもありません。
たとえば、オリンピック期間中に、飲食店が顧客と一緒に盛り上げる場を設けようと、特別なメニューを提供したり、記念品を提供するような行為は、若干、便乗商法という印象もありますが、単にイベントを盛り上げようとする企画でもあります。そのため、このような行為を一律に規制することは困難と考えられます。

ロンドンオリンピックの際、イギリスでは、London Olympic Games and Paralympic Games Act 2006という時限立法を制定しました。
これは、オリンピックの開催期間およびその前後一定の期間に限定して、オリンピック商標を使用していなくてもオリンピックとの関連を示唆するような単語の組み合わせによる行為などを禁止したり、会期中や地域を限定して広告規制を実施することを定めた立法措置(アンブッシュ規制法)です。

2020年の東京オリンピックに向けて、このような立法措置が設けられるかどうかは不明です。当面のところ、間接的なアンブッシュ・マーケティングに対しては、開催者側において、オフィシャルスポンサーやライセンシーを明確にするべく公表を行っていくなどの事実上の対抗措置しかなさそうです。

 

スポーツイベントにおける便乗広告(アンブッシュ・マーケティング)とは?-その1-