商標権侵害になりそうでならない場合③-真正商品の並行輸入

並行輸入とは

日本国内で、海外の有名ブランドと契約し、その正規代理店として当該ブランドの商品を輸入している業者がいるとします。
これに対し、当該ブランドの商品ではあるものの、正規代理店を通さないで日本にそれを輸入する行為が、並行輸入となります。

並行輸入業者は、海外ブランドと契約している日本国内の正規代理店にとって、同じブランドでありながらライバルであり、しかも、並行輸入品は、一般的に消費者に対して安く提供されるので、競争において不利です。そのため、正規代理店が、並行輸入品をどうにかしたいと考えるのは当然のことです。
そこで、並行輸入品は、ブランドに対する商標権を害するのではないかという問題が生じます。

しかし、並行輸入品が真正商品であれば、商標権侵害に該当しないと判断されています。
この問題について、初めて判断を示した最高裁判決(最高裁第一小法廷平成15年2月27日)が、フレッドペリー事件です。

裁判所の判断

最高裁判決は、前提として、「商標権者以外の者が、我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき、その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は、許諾を受けない限り、商標権を侵害する」と判断していますが、真正商品の並行輸入は、実質的違法性がないと結論づけています。

では、実質的違法性がない「真正商品の並行輸入」とは、どのような場合をいうのでしょうか。つまり、「真正商品」とは、どのような商品なのでしょうか。
最高裁判決によれば、真正商品の並行輸入として実質的違法性を欠く場合の要件は、次のように要約できます。

➀真正商品性

当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであること

➁同一人性

当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであること

➂品質の同一性

当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価されること

このように解されている理由は、商標の機能に求められます。
商標には、出所表示機能、品質保証機能がありますが、上記の要件を満たす商品であれば、出所表示機能、品質保証機能を害さないと考えられるのです。

フレッドペリー事件で問題となった並行輸入品は、商標権者の同意なく中国所在の工場に下請けさせて製造された商品でした。
そのため、許諾の範囲を逸脱し製造され標章が付されたので出所表示機能を害し、また品質管理も及ばないので品質保証機能も害すると判断され、真正商品の並行輸入と認めることはできないと判断されました。

並行輸入に関しては、並行輸入そのものに関するご相談のほか、次のような悩ましいご相談例もあります。

(1)正規代理店となっているのに、海外ライセンサーが中国の業者のテリトリー違反を黙認しているため、並行輸入品が入ってきて困る。
(2)海外の正規ブランドなのに、日本で商標権を有している業者がいるため、日本に輸出できない。
(3)海外ライセンサーが仲間割れで分裂した。

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