リーチサイト問題に参考になる欧州司法裁判所判決

政府の知的財産戦略本部が公表した知財推進計画2016によれば、デジタル・ネットワーク時代の知的財産権に対する侵害対策のひとつとして、リーチサイト対策が検討対象とされています。

同知財推進計画2016によれば、リーチサイトとは、「消費者を侵害コンテンツに誘導するためのリンクを集めて掲載するサイト」と定義されています。
リーチサイトの特徴は、サイト自体には違法コンテンツを掲載せず、別のサイトにアップロードされた違法コンテンツに誘導するリンクを集めて掲載していることにあります。

リーチサイトにより、マンガやゲームなどを違法にアップロードしているサイトへのアクセスが容易になりますので、著作権侵害を助長していると捉えることができるのですが、リーチサイト自体は、単に、リンクを張ってコンテンツのある場所を示しているだけで、違法コンテンツの保存も送信もしていません。
つまり、直接的に著作権侵害(複製権侵害、公衆送信権や送信可能化権侵害)を行っているわけではないので、責任追及が困難となっています。
ところで、欧州司法裁判所は、リーチサイト問題に参考となる新たな判決を下しました(CJEU2016年9月8日C-160/15)。

事案の概要

雑誌Playboyを出版するSanoma社は、2011年12月発売のPlayboyに掲載予定の写真が同年10月にネットに掲載されていることを発見しました。
写真はFilefactoryというサイトに掲載されていたのですが、GS Media社は、その運営するサイトGeenStijlで問題の写真にリンクを張っていました。
Sanoma社は、リンクを除去するように要求しましたが、GS Media社はそれに従わず、むしろ挑発するような態度を取ったため、Sanoma社は、リンクを張ったことにより写真家の著作権を侵害したとして、アムステルダムの裁判所に訴えを提起しました。本件欧州司法裁判所判決は、オランダ最高裁から提起された先決問題について判断したものです。

争点(提起された先決問題)

著作権者以外の者が、その運営するサイトにハイパーリンクを設置して、著作物が著作権者の許諾なく公衆に利用可能とされユーザー全体がアクセスできる第三者の他のサイトへ誘導する行為が、情報社会指令3条1項の「公衆伝達」に該当するかどうか。
情報社会指令は、欧州連合が定めた構成国の著作権法を調和させるための法令です。情報社会指令3条1項は、著作者が著作物の公衆伝達を許諾または禁止する権利を構成国が定めることを規定しています、しかし、当該指令は、公衆伝達の定義を規定していないため、その解釈が問題となりました。

欧州司法裁判所の判決

裁判所は、上記行為が「公衆伝達」に該当しうることを肯定し、著作権者の許諾なく他のインターネットサイト上に設置された保護される著作物へ誘導するハイパーリンクを張ることが、情報社会指令にいう公衆伝達を構成するかどうかを決定するためには、これらのリンクが、他のインターネットサイト上の著作物の公開が違法な性質を有することを知らなかったか合理的に知り得なかった者によって、営利目的なく提供されたかどうか、または、反対に、当該リンクが、このことを知っていたと推定されうる状況で、営利目的で提供されているかどうかを明確にすることが適切である、と判断しました。

コメント

欧州司法裁判所の判決によれば、公衆伝達行為該当性は、リンクを設置した者の主観によって決まることになると考えられます。また、情報社会指令の「公衆伝達」は、日本の「公衆送信」(著作権法2条1項7号の2)のように必ずしも送信行為を前提としているわけではないと考えられます。したがって、両者は、一見、似ているようで非なる概念と捉えられます。そうすると、日本でも、新たに「公衆伝達」権を導入してしまえば、リーチサイト問題も一気に解決するかと思われます。ただ、 一般的に、行為の構成要件該当性と主観は別の問題と思われ、日本ではこのような柔軟すぎる解釈はなじまない気がします。