小説家Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴー)の発言から保護期間についての考察

Victor_Hugo

従前の記事レ・ミゼラブルで有名な小説家Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴー)と著作権では、ヴィクトル・ユゴーが、著作権は思想そのものを保護するものではないという著作権の原則を明確に述べていたことを記載しました。

上記の原則とも繋がるのですが、ヴィクトル・ユゴーは、同じく国際著作権法学会で、保護期間についても、興味深い発言をしています。

「皆様、原則に戻りましょう・所有権の尊重です・文学的所有権(著作権)を認めましょう・しかし、同時に、公有(パブリック・ドメイン)を創設しましょう・より遠くへ行きましょう・それ(公有)を広げましょう・いかなる場合も、純利益の5~10%を超えない微々たるロイヤリテイを直接の相続人に支払うという唯一の条件で、法が、すべての出版社に対し、著作者の死後、すべての書籍を出版する権利を与えるように。とても単純なこの制度は、作家の確かな所有権とやはり確かな公有の権利と両立しており、1836年の委員会において、今、皆様方に話をしている者によって示されました。この解決方法は、内務省によって公表された委員会の議事録において、その展開とともに見いだすことができます。」

上記の発言によれば、ヴィクトル・ユゴーは、著作者に排他的権利を与えるのは、著作者が生きている間だけで良く、死後は、お金さえ支払えば、著作物を自由に使うことができるようにしたいと考えていたということになります。
ヴィクトル・ユゴーは、この状態、つまり、排他的権利がなくなる状態を、公有と捉えていたと考えられます。
なお、公有に帰した著作物は、誰でも自由に使うことができるはずなので、報酬請求権が残っている状態は、正確には、公有ではありません。

ヴィクトル・ユゴーは、著作者の死後、著作権を報酬請求権化することを考えていたわけですが、ここで、財産権を相続した相続人の権利と、思想は万人のものという公益とのバランスを図ろうとしたのです。
その発想の背景には、著作者の独占権と、人の精神の権利の優劣について、公益である後者の方が重要であるとの思想があります。

現在、著作権の保護期間は、日本の場合、著作者の死後50年であり、孫の代まで保護される排他的権利が与えられています。
EUや米国では、著作者の死後70年とされており、我が国でも、TPPが発行すれば、著作権の保護期間は70年に延長される見込みです。
このような動きをヴィクトル・ユゴーが知ったら、さぞ驚くことでしょう。

ところで、著作権の保護期間が長くなれば長くなるほど、著作者不明の著作物(孤児著作物)が増加します。
一方で、現在、知的財産推進計画では、コンテンツのデジタル・アーカイブ化を促進する方向性が示されていますが、アーカイブ化を進めるにあたって、孤児著作物に対する権利処理が問題となっています。
このような問題に対応するため、孤児著作物を使いやすくする方向で、権利者捜索の要件を緩和するなどの工夫が図られています。
このように、著作権を長く保護したいのか、それとも解放したいのか、動きが錯綜していますが、原点に立ち返る必要があるのかもしれません。

 

レ・ミゼラブルで有名な小説家Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴー)と著作権